少年が腕を大きく振り上げ、あたしを叩こうとしたその瞬間。
シュリの手がその棒を握り止めた。
「放せよ! 放せ! おまえらなんかに弟は渡さないんだ! おまえらみたいな魔族に弟の砂は渡さないんだ!」
弟の砂!
もしかして、あたしがすくった砂のこと!?
「この砂……この砂が弟さんなの?」
少年はギッとあたしをにらみつけた。
「ああ、そうだ! おまえたちみたいな悪魔のせいで、オレの弟は砂になっちまった!
おまえらみたいな魔族がお城なんかに住み着いたせいで、女王様も、癒しの一族もみんないなくなったんだ!
おまえらみたいな悪魔の手下が騎士団なんかにいるから! 女王様はおまえが殺したんだ! この魔族野郎!!」
少年のくぼんだ瞳から、大粒の涙がポロリとこぼれおちた。
シュリはそっと少年の持つ棒から手を放す。
彼はその場に崩れ落ちるように膝をついた。
「行こう、ユナ」
「待ってよ、シュリ! ほっとけないでしょ!!」
少年の言葉が引っかかる。
悪魔って何?
魔族って何?
悪魔の手下が騎士団にいるってどういう意味?
ためらうあたしの手を、シュリは引っ張った。
何も言わず。
何も語らず。
ただ、彼はその場を後にしようとした。
そのとき、大きな石が飛んできて、シュリの額に鈍い音をたててぶつかった。



