「あたしって、そんなにわかりやすい?」

「とっても。ま、こう見えて、そういう勘は鋭いので。性分なんですけどね。でないと、上に立つ人間としてはまずいんですよ。

常に相手の感情の、小さな起伏に気を配ってなければ、より的確な指示は出せませんからね」

「さっすが、騎士長補佐殿。恐れ入りました」

「おほめにあずかり、光栄です」


クラウスはそう言いながら、あたしの鼻の穴を塞ぐティッシュを引き抜いた。


「うん。大丈夫そうですね。起き上がってもいいですよ」


あたしはゆっくりと起き上がる。

ふかふかソファーに座りなおして、氷枕をもって部屋を出て行こうとするクラウスを呼びとめた。


「また、シュリの護衛付きになるの?」

「嬉しくないんですか?」

ニンマリ。

もう一度、意地悪なほほ笑みをのぞかせる。


「イジワル」

「姫様を見ていると、イジワルしたくなっちゃうんですよ。とってもお可愛いのでね」

「クラウス~!」

「ハハハ、すみません。このままだと、寝不足になりそうでしょう? シュリには部屋の外で警護するように言ってありますから。ゆっくりお眠りください」

「部屋の外? それじゃ、シュリ、眠れないよね?」

「心配無用ですよ。シュリは場所に関係なく、眠りませんから」

「は?」

「今の彼は、眠るのも惜しいでしょうから」