最低だ。


鼻の穴を塞ぐティッシュをいじりながら、あたしは大きなため息をひとつ。


鼻の両穴にティッシュを突っ込んで氷枕に寝転ぶ女子高生の隣には、立派な体つきの深緑の髪の体育会系風美青年。


「息苦しいかもしれませんが、もう少しこのままで」

「はい」


裸の次に恥ずかしい姿。

花も恥じらう乙女のはずなのに。

両鼻ティッシュで、情けなさ過ぎて涙でそう。


救いなのは、この場にシュリがいないってこと。

こんな姿でシュリには絶対に会いたくない。


「それにしても、まさか姫様がこんなに鼻血が出やすい体質だったとはね。思いもよりませんでした」

クックック。

笑いをこらえながら、クラウスが言った。


「そんな意地悪言わないでよ。あたしだって、好きでこんなふうになってるわけじゃないんだから」

「確かに。でも、やっぱり可笑しくて」


目じりを下げて、クラウスは笑う。

笑い上戸らしく、下がった眼尻に涙の粒が見える。


あたしの口から、漏れでるのはため息ばっか。

「にしても、興味ありますねぇ。姫様の鼻血がでるほど、興奮した理由がなんなのか」


ニンマリ。
意地悪なほほ笑み。

っていうか、この人絶対、その理由知ってるよね?