●相田翔一●

ホスト仲間の紹介で、吉田ひなこを知った。

初めて彼女を見た時、柄にもなく心が大きく揺れた。

笑った時の目の細め方?身長?体型?声?

存在している雰囲気じたいが…似ている…菜々子に……。

歳も変わらない……。

店はまずまず軌道に乗っていた。

独身でフリーの吉田ひなこは、帰宅時間など全く気にする事もなく…懸命に店に尽くしてくれた。

娘2人までもが…吉田ひなこに心許したようだった。

キッチンバー「nanako」は、この吉田ひなこと共にスタートしたようで、この店にとって、なくてはならない存在になっていった。

日々過ぎていく中……俺にとっても、子供にとっても、なくてはならない人に……どんどん昇格していった。

ホスト当時の客は、開店当初よく顔を出したが…その内減り始め…今ではもう半数も来なくなっていた。

何故かって…客は今までの延長線上で、俺を商品として見る。

金出せば、いつでも相手してくれる、俺の体はまだ売り物だと思っていたらしい。

ところがドッコイ…俺の今の売り物は料理だった。