尾崎が話し出した。

「目標目指してまっしぐらって…こうゆう事言うんだよな、この世界に溺れないでさ…クロール形で、ゴールまで泳ぎきったって感じだよな…」

「それは、お前がいたからだよ、ここまで来れたんだよ」

「違うよ…そらぁ…俺の力も多少はあったろうよ。でもさ…守らねばならない者があるって言うのは、こうも違ってくるもんだよな。俺も子供欲しいよ……俺さ…貯金って、幾らぐらい持ってるか知ってか? 」

それはスイスかフランスか、何処で作られたかわからない、いかにも高級そうな腕時計ちらつかせた尾崎が、質問してきた。

  尾崎の貯金額?

この近辺では三本の指に入る名高いホストクラブ、そこのナンバー1の貯蓄額?

「ん億円か?俺には想像もつかないよ」

「お前だけに申告してやるよ。預金額は0さ…笑わせるだろ?」

俺は、意味がわからなかった。

「財布にはざっと50枚ぐらい、いつも持ってけど、それが俺の全財産さ。 まぁ、車や貴金属もあるけど、金に替えたらそんな物は二束三文さ。外見飾り立てても…中身は空っぽって訳…何の目標もないんでね…これを溺れ組って呼ぶのかな……」

俺は驚いた、非常に……。