『ちょ…っ、もしもし綺ちゃん!?
綺ちゃん!?』
その場にしゃがみ込んだあたしの耳には、携帯から和也くんの声が聞こえる。
「…うそ…」
――嘘だ。嘘だ嘘だ!
だって陵は、もうすぐ着くからって。
待ってろって、そう言ったのに。
どうして?…どうして?
あたしは携帯を手に取り、立ち上がって夢中で病院へと足を進めた。
「…陵…陵…」
陵…大丈夫だよね?
事故にあったって言っても、ちょっと怪我しただけでしょう?
「やべえ、俺マジかっこ悪いー」
いつもみたいに、そんなこと言って笑ってみせるんでしょう?
ねえ、陵――…
「…陵…っ」
溢れ出した涙を拭うことなく、あたしはひたすら病院に向けて走った。

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