ガチャッ…
病室から出て、少し歩いた所にある小さな部屋。
陵のお母さんがドアを開けてくれて、あたしは中に入った。
部屋の真ん中には真っ白なベッドが置いてあって、あたしはそっとそれに近付く。
「…陵」
――ベッドに、陵の姿。
いつもと、なにも変わらない。
ただ、眠っているような綺麗な顔。
…だけど。
あたしを引き寄せる腕も。
あたしを包み込む広い胸も。
何度も重ねた唇も。
あたしが大好きだった、あの笑顔も。
「…陵…っ!」
もう、返って来ない。
もう二度と、―――陵に会えない。
「陵…!」
そっと、陵の頬に触れた。
冷たくなった頬には、事故の激しさを物語るように、いくつもの傷がある。

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