あたしは東 奈津(ヒガシ ナツ)、26歳。

何人か部下もできて、それなりにキャリアを積んできた。



12月のある日…

部長に呼び出され、部長のデスクの前。

「移動だ。お前の業績が認められた。」


あたしが勤めてる会社は、イギリスを拠点に世界各地に支社がある、大企業。



「イギリス本社に行ってもらう。
3ヶ月後だ。」

「…はい。
あの、部長…お願いがあるんですが、いいですか?」


「なんだ」


「私の移動、みんなに言わないでもらえますか?
私が出発してから、伝えてください。」


「かまわんが…お前が海外に行くのを知ったら、みんなは送別会みたいなのやるんじゃないのか?」


「私、そういうの苦手なんですよ」



あたしは、そう言って部長のデスクを離れた。


イギリス…か…

遠いな…




「先輩っ♪
どーしたんすか?」



「いや、なんでもないよ」

あたしは笑って答える。


今話しかけてきたのは斉藤 駿介(サイトウ シュンスケ)、23歳。

去年入ってきたあたしの部下。


長身で細身で、イケメン…
いわゆる、モテる男だ。

仕事のできは至って普通…