月明かりは、いつまでもあたしたちを照らしていて───。
それは、悲しいくらいに綺麗で、儚げで。
犯してしまった罪も。
世間への冒涜感も。
その一瞬だけは、忘れさせてくれたんだ。
「もう俺、このまま死んでもいいかも…」
あたしの髪を撫でながら、陸が小さく呟いた。
「ダ、ダメだよ!陸が死んだらあたしだって生きてる意味ないし」
「ぷ。何ムキになってんの?可愛いでちゅねー?」
クスクス笑いながら、陸があたしの頬をつまむ。
「…なっ!陸が変なこと言うからじゃん」
「はは。でも、本当だよ」
「……え」
陸の真っ直ぐな瞳が、あたしを捕らえて離さない。
「そんくらい、今すげー幸せだってこと」
「…陸」
うん、幸せだね。
こうして、陸に腕まくらしてもらって。
髪を撫でてもらって。
あたしはきっと、世界で一番幸せ者だ。



