ぼんやりと、男の人の顔が脳裏に浮かんだ。 そうだー…… あのとき、由紀に男の人を紹介されて。 名前、なんて言ったっけ? すごく優しい顔で笑う人。 その人が、あたしの肩を支えてくれていた気がする。 記憶の欠片が、少しずつ形になっていく。 確か、あれから、タクシーに乗って…… それから? ─…だけど、どんなに思い出そうとしても、それ以降の記憶は完全に抜け落ちていた。 誰が、あたしをここまで運んでくれたんだろう。