「あぁもう!二人とも暗いよ!」 湿った空気を取り払うかのように、由紀が手を叩きながら声を上げた。 「だいたい、なんで慶太一人なの?千明さんは?」 「あぁ、もうじき来ると思うよ」 勝手に繰り広げられる二人の会話に、あたしはポカンと口を開けたまま。 ──千明さん? 千明さんて、誰デスカ? 「あ、きたきた」 「…え、」 慶太さんの視線を追うように、背後を振り返る。 「遅れてすみません!」