梓とはヨリを戻したはずだった。 だから、それなりに覚悟を決めて── 求められれば、キスだってした。 なのに……抱けない。 「…りっくん。自分の立場、ちゃんと分かってる?」 梓が、小さく呟いた。 「……あぁ」 分かってるよ。 分かってるけど、無理なんだ。 アイツへの想いが、俺の本能に歯止めをかける。 「…ならいいけど。また土曜日、待ってるから」 梓はそれだけ言うと、ベッドの上の鞄を俺に向かって放り投げた。