──カチャ。 後ろ手で鍵を閉めた音が、鼓膜で響いた。 梓は無言のまま俺の胸にもたれると、そのまま縺れるようにベッドへと倒れこむ。 一瞬、梓の髪からバニラのような甘いにおいがした。 「……─ねぇ、抱いて?」 少し掠れた声が、耳元で響いた。 男とは、なんて情けない生き物なんだろう。 自分の気持ちとは逆に、本能が暴走してしまう。 気がつけば、梓を押し倒していた。