「……悪い」 俺は、繋いでいた手をそっと離して、足を止めた。 「……りっくん。どうして?」 今にも泣き出しそうな顔で、梓が俺を見上げる。 梓はガキの頃から仲が良くて、俺にとっては妹みたいな存在で。 だから、そんな顔をされると、罪悪感から心が痛む。 だけどそれ以上に、今の俺は姉貴のことで頭がいっぱいだったんだ。 「…帰って、そばにいてやりたいんだ」 「そばにって、誰の…」 「……姉貴の。アイツ、朝から寝込んでたから」 そう言った瞬間、目の前の梓の表情が強張った気がした。