逃げようとしたあたしの前を、男が立ちはだかる。
「いいじゃん。一人で乗るより楽しいよ?」
そして、男の手があたしの手首を掴んだ。
「ちょっ…離してよ」
「どうしよっかな?」
ちょっと……
ほんと、やだっ…!
「…俺の女に何か?」
───えっ。
急に降ってきた、聞き慣れた低い声。
「……陸っ」
うそ、いつの間に…
「チッ。男連れかよ」
「やめやめ。他探そうぜ」
つまらなそうに去っていく男たちを横目に、陸は小さく溜め息をついてあたしを見た。
「何他の男に触られてんだよ…」
「ご、ごめん……」
しゅんと肩をすくめたあたしに、陸が言う。
「真弥に触っていいのは俺だけ。分かった?」
「…うん」
ねぇ、陸。
あたし、変かな?
怒られたはずなのに、すごくドキドキしてる。
陸が嫉妬してくれたことが嬉しくて。
ごめんね、陸。
少しだけ、さっきの人たちに感謝したいぐらいだよ。



