「…寒くない?」


「ん…平気」



寒さなんて忘れてしまうほど、繋いだ手が熱いから。


陸の手から伝わる温度が心地よくて、幸せで…。


この瞬間だけ、あたしたちは恋人同士になったような気がした。



「…ごめん。手汗すごいだろ?」


「え?平気だよ」


「なんか俺、すげー緊張してる。多分、真弥がいつも以上に綺麗だから」


「…なッ!」


何を言い出すの、突然。


陸ってば、平気でそんな台詞口にするけど、聞いてるこっちの身にもなってほしいよ。

心臓もたないっつーの!



…それに。


陸は、あたしを「姉貴」じゃなく「真弥」と呼ぶ。


それが新鮮で、呼ばれるたびにドキッとしてしまう。


陸はずるい…


あたしの喜ぶことを知っているかのように、小さな幸せを沢山くれる。


あたしだけがドキドキさせられてるみたいで悔しいよ。