待ち合わせの時間の10分前に、駅前に着いた。
ぐるりと辺りを見渡すも、陸の姿は無い。
…時間まで、どこかで暇つぶししてるのかな?
そんなことを考えて、ベンチに腰を下ろした時だった。
──ギュウッ……
突然、背後から抱き締められたかと思えば、
「……待ちくたびれた」
耳元を掠める、愛しい人の声。
「…陸!」
振り返ると、やっぱりそこには大好きな陸の姿があって。
嬉しいやら、恥ずかしいやら、いろんな感情が込み上げてくる。
「ま、待たせてごめんね?寒かったでしょ」
「うん、でも……
待った分、今めちゃめちゃ嬉しいからいーよ」
「陸…」
不思議。
毎日のように家の中で顔を合わせているはずなのに、なんだか久しぶりに会った恋人同士みたい。



