それから一晩中、あたしは一睡も出来なかった。 瞼は重いのに、あの光景を思い出すと息が詰まりそうになって──……。 いっそ、夢だったと言ってくれたら、どんなに楽か。 だけどこれは、紛れもない事実。 その証拠に、唇がまだ、感覚を覚えてる。 ……陸。 陸は、いったい何を考えてたの? 人違い? だとしたら、どうしてあたしの名前を呼んだの? 分からないよ。 教えてよ、陸……。