──そして。
それからは、まるでスローモーションのようだった。
大きな影が近づいてきたと思ったら、唇になにかが触れる感覚。
それが陸の唇だと分かったとき、あたしの中で何かが音を立てて壊れたような気がした。
う、うそ……
ちょっと、待ってよ。
今の、なに──?
そっと、自分の唇に触れる。
まだ残っている、柔らかい感触。
「…ッ!」
気づいた時には、足が勝手に動いていて。
陸の手を振り払い、あたしは逃げるように部屋にかけ込んだ。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…