慎重に、一本ずつ、指を離していく。


陸の指に触れた自分の手が熱くなってることには、気づかないフリをして……。


「…あとちょっと…」


…ごめんよ、陸。




しかし、
次の瞬間。


「…姉貴…?」


──え?


顔を上げた瞬間、あたしは一瞬、息をするのを忘れた。


陸の漆黒の瞳が、間違いなくあたしを捕らえている。



……嘘。起きてたの?


いつから?


「あのっ、これはっ…」


慌てて、陸の指から手を離す。


やだ、誤解されたらどうしよう。



「……」


しかし、陸は表情を変えることもなく、ただ黙ってあたしを見つめたまま。


もしかして、寝ぼけてる?