「じゃあ、行くか?」


そう言って立ち上がる。


私の皿に料理が残っていることなんてお構いなしだ。


まぁ、振袖のせいで平らげることなどできないから、料理はいい。


問題はこの気遣いのなさだ。


「行くって、どこにですか?」


「最上階に部屋を取ってある」


それが意味するところを知らない年齢に戻りたい。


「帰らせていただきます」


既成事実を作ってしまっては逃げ道が完全になくなる。