今日、俺は卒業する。この中学校を。

卒業式が終わり、生徒玄関を出た俺は、買ってもらったばかりの携帯にイアホンを繋いだ。

「遅いな・・・あのバカ」

周りに人がいるが、別に独り言言ったって嫌われる訳じゃない。むしろ、独り言を聞いてほしかった。

(藍・・・)

俺がこの中学に入学してから、ずっと好きだった女性。その人がいま、すぐ傍にいる。恐らくは俺と同じく人を待っているのだろう。

腰を過ぎる程長い髪なのに、少し毛先が痛んでいるのを隠すためか、団子の形に編んでいるせいで短髪に見える。

大きくてつぶらな瞳には、ピンク色の携帯が写っていた。俺と同じように買ってもらったばかりなのだろうか?ボディがぴかぴかと光を反射している。

ふと、藍がこっちを見た。急いで視線を外すが、恐らく見ていたことに気付かれただろう。

「ケン!待たせて悪い!」

有り得ないタイミングで、友人が到着。助かったのか、邪魔されたのか・・・

まあ来ても来なくても恐らく何の差し支えも無かっただろう。

なんせ・・・