【長編】ホタルの住む森


右京は蒼が手渡すコーヒーを受け取りながら眉間に皺を寄せている。

どうやら晃の二度目の結婚宣言を聞いて、学習能力の無い親友に頭を抱えているらしい。

しかも正式なプロポーズは今夜だというのだから、順番が違うだろう?と呆れるのを通り越し、疲れ果ててソファーに突っ伏している。

幸せオーラ全開の晃のテンションは、陽歌がやって来た土曜日から丸二日寝不足の右京には、かなり堪えたらしい。

それは晃も同じ条件なのだが、テンションがハイの彼には全く問題がないらしい。

晃が「右京も体力が無くなったね。年なのかなぁ?」とからかうと、右京は「誰のせいで疲れてると思ってるんだよ。この幸せボケが」と悪態を吐いた。

晃はそれを軽く笑い飛ばし、コーヒーを楽しみながら新聞を広げる。

右京はソファーに体を投げ出して、「30分寝る」と言って目を瞑った。

窓の傍では賑やかな父親達を横目に、暁が杏の髪を梳いてやっている。

どうやら高端家に泊まった朝は、杏のご指名を受け彼が髪を結うらしい。

兄妹のように育っただけあって、暁は杏をとても可愛がっていて、杏もまた暁を慕っているようだった。