【長編】ホタルの住む森


その時、突然強い力で引き寄せられ、あっという間に晃の膝の上に乗せられた。

驚きに口をパクパクさせている陽歌に、晃は窓から射し込む朝陽より眩しい笑顔で言った。

「おはよう。寝こみを襲うのはフェアじゃないよ」

「ねっ…寝こみを襲うなんて…違っ…!!」

「あれ、そうなの? 残念だなぁ」

晃はクスクス笑うと、自分より頭一つ大きくなった陽歌を見上げた。

「朝方随分うなされていたね。何度も起したけど目覚めなくて…ずっと茜の名を呼んでいたよ」

「…茜さんと話したの。彼女は消えようとしていて、私、必死で止めたの。一緒に生きて欲しいって」

陽歌は晃が茜を死に導く為に現世で添わされた事実だけ伏せ、そのほかの事を大まかに説明をした。

前世からの因縁や茜の背負ってきた運命についても晃は黙って聞いていたが、前世の茜の死を聞いた時は痛ましげに眉を顰めて目を伏せた。

最後まで聞き終えると、晃は大きく息を吐(つ)いた。

「僕がまだこの世に生かされているのは成すべきことがあるから…か。天命ってのが何なのか…何となく解る気がするよ」

「え、本当に?」

「ああ、生きている間に成し得る事が出来るかは疑問だけどね。でも出来ないとヨボヨボになっても死なせてもらえないって事だろうなぁ?」

晃の言い方に陽歌は思わず声を立てて笑い、それまでの張り詰めた雰囲気が僅かに緩んだ。