『陽歌ちゃん、一度転生を拒んだ私はもう二度と生まれ変わることが出来ない。大気の中に消えるしかないの。
それに、罪を犯した私達はたとえ転生しても二度と愛し合うことは許されない。でもね、あなたが私の瞳を持つ限り、私の晃への想いは消えることが無いわ。陽歌ちゃん、あなたには本当に感謝しているの。どうか私の分も晃と暁を愛してあげて。きっと幸せになってね』
「やだ、茜さん! 一緒に居て。私と一緒に晃さんを愛していこう? ずっと一緒だったじゃない。これからもずっと一緒に生きていこうよ」
茜はゆっくりと首を横に振った。
『自分の足で立ってしっかりと生きるのよ。晃とあなたの幸せをずっと見守っているわ…』
「ヤダーッ! 茜さんの嘘つきっ! 晃さんと一緒に生きる為にもう一度還るって言ったじゃない。あれは嘘だったの? 私だけじゃダメなの。私の中の記憶だけでもダメなの。私達は16年間魂を分け合って生きてきたじゃない。茜さんは私の一部なのよ。一緒にいないと私は陽歌じゃなくなってしまう。今更心が半分なくなったら私どうすればいいの? お願い。私を独りにしないで。もう誰かが逝ってしまうのはイヤ。
茜さん言ってたじゃない。生きたくても生きられない人は沢山いるって。パパやママは還って来たくても還ってくることはできないわ。でも茜さんは還って来られた。生きることができるのよ。また消えるなんて許さないわ。ねぇ、茜さんはここにいなくちゃダメなの。晃さんの処へ一緒に還ろう。ずっと一緒に彼を愛していこう」
陽歌は茜に縋って必死に訴えた。
茜は困った顔をして、陽歌をフンワリと抱きしめた。
『ずいぶん大きくなったのに、行かないでって泣くのはあの頃のままね』
クスクスと笑うと桜の花の香りがフワリと周囲に広がった。
茜の姿が徐々に光の中に消えていく。
陽歌が手を伸ばしたとき、茜はひと際眩しい光に呑まれた。
「いやっ、いやあーっ。茜さん逝かないでっ」
陽歌は絶叫してその場に泣き崩れた。
涙に濡れた両手には、桜の花びらが残されていた。



