窓のない窓際

 
「じゃあ、俺そろそろ帰るから。
瑞希くん、梨華のことよろしくね」

「おうっ」


和樹は中腰になって水上と視線を合わせた。


「バイバイ、梨華」


それから、和樹は俺にペコッと頭を下げると、俺たちに背を向けて歩き出した。


その時だった。


「か……和樹……!」


それまでずっと黙っていた水上が、大きな声を張り上げてアイツの名前を呼んだ。


和樹はゆっくり振り返る。


水上がアイツの元に向かって走り出しそうになったから、俺はとっさに腕を掴んでそれを阻止した。


水上が俺の方を向く。


口では何も言わなかったけど、目が必死に訴えていた。


「離して」って。