九月。
暦の上ではもう秋。

でも、まだまだ暑い日が続いていて、上がりたての小学校からの帰り道は体の芯から溶かされるような熱気だった。
小学校の近くにたくさんある田んぼは金色の稲穂が中にパンパンに実をつめて、きらきらと輝いている。

二学期が始まったばかりのうだるような暑さの日の帰り道。
隼人は学校を出てからずっと暑いと文句を言っている。

只でさえ暑いのに横で文句まで言われたら堪らない。


文句を言うのは止めろと言うと案の定喧嘩になった。


海ちゃんは帰ったらどこか涼しいところへ遊びにいこうと私たちを宥める。


夏の暮れはじりじりと溶けてしまうような空がまるで落ちてくるくらい低い。
それはあんまり心地いいものじゃなくて、なんだか自分だけ世界においていかれている見ないな寂しい気持ちになる。

「ランドセル置いたら神社の下に集合な!!
錫、早く来ないと置いてくからな。」

偉そうに腰に手を当てて隼人は言う。
私はそれを聞いて、あわてる。

「大丈夫、錫。置いていかないから。」


海ちゃんはそう言って笑ってくれたけど、隼人は本当に私だけ置いていってしま
うかもしれない。

急いで家に帰ろうと石段を一段飛ばしで駆け上がる。



階段の隅に蝉の死骸が有るのが見えた。