ほら、今だってすぐに見つけ出せた。

隼人はどこへ行っても人の目をひくと思う。
整った顔立ちに背も高い。
程よくついた筋肉が描くからだのラインは美しい。
さすが、月神様の生まれ変わりの月宮家の子供だ、と昔から言われていた。


ぶっきらぼうで、怒りっぽくて。
でも、傷つけようとわざわざ暴言を吐くことは決してない。
ただ不器用なだけなのだ。


隼人が私に対して、冷たい態度をとり始めたのは、海ちゃんが死んで2、3年してからだったと思う。
それは、隼人が一方的に私を嫌いだしたんじゃなくて、きちんとした理由がある。


すべて私の罪だ。


海ちゃんが、もし、死んでいなかったら、私たちはいまだにからだの一部みたいに一緒にいたままだったろうか。
考えるだけ無駄なもしもの話なのに、私は何度この仮定をしただろう。


隼人が、笑ってる。
チームの男の子がホームランを打って、二塁にいた隼人もホームベースに帰ることができたようだ。
ホームランを打った男の子も泥だらけになってベンチに帰れたようだ。
皆で喜び合ってる。


笑ってる。
黙っていると、すごく隼人は大人びて見えるけれど、顔をくしゃくしゃにさせて笑ったら隼人はすごく子供っぽくなる。

私に笑いかけたわけじゃないのに、その笑った顔を見るだけで、私の心は熱くなってぎゅっと締め付けられるみたいだ。




隼人が、ぼうっと見ていた私に気がついた。
その瞬間、隼人から笑顔が消えて、あの顔つきになった。



「錫子!!!!危ない!!!!」


その瞬間、頭に受けた鈍い痛みともに、私は意識を手放した。