恋なんてしません(仮)―――多分。

「持っていても仕方がないなら、僕に頂戴」
「え?」
「いつか僕は十六夜さんにファンレターを書くときに、見本にしたいの」
「ファンレター⋯」
みんな、莉風にどんなふうに思いを伝えてるんだろう。
「御願い」
「ああ⋯じゃあ、いいよ」
莉風は僕に、それを渡した。
「ありがとう」
僕は自分の手提げに入れた。
そして二人で歩き出そうとした、そのとき。
誰かの指が、僕の背中に触れた。
「あの」
「へ?」
僕が振り向くと、そこにいたのは十六夜さんだった。
「い、十六夜さん⋯」
「それ、お手紙じゃん。⋯紫鶴くん、人気者だね。なーんか、遠い人になっちゃったみたい」
「ええええ?」
遠い?
いま僕らの間隔は、模範的な距離ですが。
「遠くないよ」
僕はニコニコして言った。
そのまんまの意味。
すると、十六夜さんは顔を真っ赤にして、「そ、そっか」と上履きを履いて、そそくさと教室へ向かってしまった。
「え、どうしたんだろうね」
僕が言うと、莉風は苦笑いした。
数秒後、僕はハッとした。
「も、もしかして、これ全部僕が貰ったものだと勘違いされたのかな」
「そうじゃない」
莉風は情けないようにため息を付くと、誤解を解いておいで、と僕にいった。
「え、でもさ、解かなくても後々わかるよ」
「・・・うーん」
莉風は、悩ましそうに微笑んだ。