恋なんてしません(仮)―――多分。

「何⋯」
僕より身長が、10センチくらい高い千草に向かった。
「わかる、千草。僕は身バレしたくないんだ。わかってくれるよね」
じいっと僕は千草の目を見た。
「え、なんで?」
「⋯は?」
物わかりの悪い千草。
「⋯だーかーらあ、学校で僕に関与するのはやめてくれ」
「えー⋯」
「僕はこの学校で、平々凡々な人生を送りたいんだ」
「俺と大体一緒のタイミングで早退してるんだから結構怪しまれてるけどお前」
「え⋯」
早退の時間のことは考えてなかった。
「ヤバイ、じゃあちょっとずらしてもらわないと」
「そんなことできんの?」
千草は笑って言った。
「うん」
僕がいうと、千草は「あ」といってニヤけた。
「な、なに」
「ていうか紫鶴は、十六夜が好きなんだろ」
「ああああああああああああああああ」
なんで急にその話題!?
手をブンブン振って、僕は絶叫する。周りに人が居なくてよかった。
「図星か」
千草はケラケラ笑いながら、僕を見る。
「うう⋯、好きじゃない、好きなんじゃなくって、そう、推しなの」
「推しぃ?」
千草は首を傾げる。
僕は、眼鏡を外した。
「そう、僕らが誰かに推してもらえるように、僕は十六夜さんを推してるだけなんだ」
「そう」
「だから、好きとか一切ないよ。というか、この事務所自体、恋愛禁止なんだし」
(好きじゃないのは嘘だけど)僕がいうと、千草は硬直した。
「え?どうしたの?」
「⋯いや、なんもないよ」
「ふーん、じゃあ、わかったなら僕の平穏な推し活人生を邪魔しなさんな」
僕は、千草を睨んでから、自分の教室へ向かった。
そして、陰気くさい眼鏡をかけ(度は入ってるんだけどね)、自分の教室へ向かったのだった。