恋なんてしません(仮)―――多分。

そして、日曜日。
有栖は誰よりも先に来ていた。
温かい蜂蜜色のフリルスカートを履いて、ローマ字が印字された長袖の白シャツを着ていた。
「ふんふんふんふんふんふんふーん」
鼻歌を歌いながら、ぱたぱたとかわいいブーツを揺らしている。
「まーだかなあ」
有栖は、ポケットからキャラメルを一箱取り出して、一粒口に含んだ。
「甘あい⋯」
そのキャラメルのような色をしたベレー帽を被り、有栖は空を見た。
「んふ、紫鶴くん、まだかな」


「うわああああ、どうしよどうしよ、服が決まらないよおおお」
クローゼットの前で、僕はジタバタしていた。
朝早くだったので、紫紺は起きないと思っていたが、眠たそうに起きてきた。
「んん⋯、どうしたの、お兄ちゃん⋯」
「うわっ、紫紺。えーとね、服が決まらないんだよ」
「ふぇえ⋯。そんなこと」
紫紺は目をこすると、クローゼットを見た。
「んー、どーでもでよくない⋯、お兄ちゃん普段ファッションなんて気にしないんだから、それでいいじゃん」
「よくないんだよお」
それに、と僕は続ける。
「それに、ラフだと・・・」
「何が駄目なの〜」
紫紺は、ラフな格好に手を伸ばした。
「ほら、これと、これとか。いいじゃん、似合うよ」
それかだれかになにか言われたの、と紫紺に言われる。
「言われてないよ⋯でも、今日はちょっと、普通で、誠実な感じの服が着たいの」
「誠実な感じ⋯じゃあこれでしょ」
紫紺が僕に差し出してきたのは、いかにも普通で誠実そうな感じの服だった。