キスするくせに、彼氏じゃない。

私は首を横に振る。

 

「じゃあ、いいだろ」

 

声があまりに普通だった。

 

私は隣を見た。

彼は道路の向こうを走る自転車を見ていた。

私が言葉を探していることにも、気づいているのかもしれない。

 

「……待たせたから」

 

ようやく、それだけ言えた。

 

瀬川くんがこちらを見る。

 

「本、読めたし」