キスするくせに、彼氏じゃない。

「白石さん」

 

教室を出ようとしたところで、呼び止められた。

同じクラスの女子だった。

 

「瀬川くんと、付き合ってるの?」

 

喉の奥が詰まる。

 

「付き合ってない」

 

思ったより強い声になった。

相手が少し目を見開く。

 

私は鞄を持ち直した。

 

「……ハンカチ、返してもらっただけ」

「そっか」

 

それ以上、聞かれなかった。

 

廊下へ出てから、自分の言い方を思い返す。

もっと普通に答えればよかった。

でも、普通の声がどんなものだったか、その瞬間にはわからなくなる。