キスするくせに、彼氏じゃない。

彼は一度手元へ目を落とした。

 

「別に、それくらい」

 

その返事を聞きながら、私はハンカチの端を指でなぞった。

青い花の刺繍。

いつもと同じものなのに、何だか鞄へしまうのが惜しかった。

 

教室の中から、誰かがこちらを見ている。

気づいた途端、指先が止まった。

 

瀬川くんが、私の視線の先を一度だけ見る。