キスするくせに、彼氏じゃない。

先輩はファイルを少し持ち上げた。

 

一緒に職員室まで歩いた。

たった十数歩だった。

それでも、こちらが話題を探さなくていいのは楽だった。

 

先輩は入口で足を止め、私を先に通してくれた。

 

「じゃ、白石さん。またね」

 

また。

 

私は小さく頭を下げた。

 

「……はい」

 

そのときは、それ以上のことは何も思わなかった。

 

*