キスするくせに、彼氏じゃない。

彼が振り向く。

 

思ったより声が響いた。

廊下の何人かまで、こちらを見た。

 

私は鞄の持ち手を握った。

 

「……歩きながらは、危ない」

 

瀬川くんは手元の本を見た。

それから、私を見る。

 

口元が少し緩んだ。

 

「はい」

 

素直すぎる返事だった。

 

何だかからかわれた気がして、私は先に顔をそらした。

 

*