キスするくせに、彼氏じゃない。

「急いでないよ」

 

瀬川くんはうなずいた。

それで会話は終わりだった。

 

すれ違ってから、私は一度だけ振り返った。

彼はもう本を開いていた。

歩きながら読むと危ない、と言おうとして、やめる。

 

それくらい、自分でわかっているだろう。

 

なのに。

すぐ先の曲がり角で誰かとぶつかりかける姿を想像してしまって、口が動いた。

 

「瀬川くん」