キスするくせに、彼氏じゃない。

次の朝、廊下ですれ違った。

 

私は教室へ向かうところで、瀬川くんは反対側から歩いてきた。

片手に本を持っている。

 

目が合った。

 

会釈だけにしようと思った。

学校では、それくらいがちょうどいい。

 

でも彼は、私の前で足を止めた。

 

「白石」

 

近くで話していた女子の声が、少し小さくなる。

私は気づかないふりをした。

 

「……何」

「ハンカチ、明日でいい?」

「うん」

「まだ乾いてなくて」

 

その説明が意外で、思わず顔を見た。