キスするくせに、彼氏じゃない。

電車に乗ってから、瀬川くんの右肩が濡れていることに気づいた。

 

黒い制服だから、外ではよくわからなかった。

けれど車内の明かりの下では、肩から袖にかけて色が濃くなっていた。

 

私は鞄を開けた。

ハンカチを取り出し、隣に差し出す。

 

「これ」

 

彼は私の手元を見た。

 

「何」

「肩、濡れてる」

 

言うと、自分の右肩へ目を向ける。

まるで今知ったみたいな顔だった。

 

「別に、すぐ乾く」

「でも」