キスするくせに、彼氏じゃない。

噂を聞いていないのだろうか。

それとも、知っていてどうでもいいのだろうか。

聞いたら、今の空気がなくなってしまう気がした。

 

「……何でもない」

 

律は前を向いた。

しばらく、雨の音だけになった。

 

それから。

 

「傘、入るのに理由いる?」

 

私は横顔を見た。

 

律は歩きながら、傘の位置を少し直した。

私の左肩が濡れないように。

 

「……いらない」

 

そう答えると、彼はうなずいた。

 

駅までの道が、いつもより短かった。

 

*