キスするくせに、彼氏じゃない。

彼が半歩ずれた隙間に入ると、背中の後ろに扉横の仕切りがあった。

ようやく足を置く場所が決まる。

 

「……すみません」

「いや」

 

電車が動き出す。

私は目の前のつり革を見上げた。

届かなくはない。

でも、腕を上げる隙間がない。

 

彼は私の視線を追ってから、自分の腕を少しこちらに寄せた。