キスするくせに、彼氏じゃない。

「代わる」

「私が奥にやっちゃったから」

「それ、今は関係なくない?」

 

そう言われてしまうと、返せなかった。

私は少し横へずれた。

 

律が床に手をつき、隙間へ腕を入れる。

ボールが、ゆっくり手前へ動いた。

 

「あ、来た」

 

思わず身を乗り出す。

律はボールを片手で引き寄せ、こちらへ転がした。

 

「ありがと——」

 

立ち上がろうとしたところで、頭の上に手が触れた。

 

止まる。

 

「そこ」

 

律の目が、舞台の張り出した縁を示していた。

額のすぐ上だった。

 

あと少しで、ぶつけていた。