キスするくせに、彼氏じゃない。

駅の外へ出て、ようやく腕を離した。

指の置き場が急になくなり、私は鞄の持ち手を握り直した。

 

「助かった。ありがとう」

「ん」

 

彼は袖を軽く直した。

私がつかんでいたところに、細かな皺ができている。

 

「あ、袖」

 

手を伸ばしかけて、引っ込めた。

自分で直せるものに触ろうとして、どうするんだろう。