キスするくせに、彼氏じゃない。

彼は前を向いたままだった。

 

「端、歩きすぎ」

「うん」

 

今度は、離れなかった。

 

昇降口で別れるとき、私は自分から顔を上げた。

 

「本、読み終わったら教えて」

 

瀬川くんは靴箱を閉める手を止めた。

 

「わかった」

 

それだけで、一時間目の始まりまで少し気分がよかった。

 

*