キスするくせに、彼氏じゃない。

顔を上げた。

 

瀬川くんが、数歩先に立っていた。

 

「……おはよう」

「おはよう」

 

彼は私の隣へ来て、ホームの表示を見上げた。

息が少しだけ弾んでいる。

 

「走ったの?」

「踏切、閉まりそうだったから」

「間に合った?」

「うん」

 

会話が途切れる。

 

朝の風が、線路の向こうから吹いてきた。

私は髪を耳にかけた。

隣の人を見ないように、到着案内を見る。

 

五分早く出ても、同じ電車だった。

 

それを少し嬉しく思っていることは、自分でも認めたくなかった。

 

*