きみが窓を見なくなるまで

廊下から足音が聞こえて、二人で手を離した。

先生が扉を開ける。

「お待たせ。そろそろ閉めようか」

私は頷き、カウンターへ向かった。

当番ノートを渡す。
筆箱をしまう。
鞄を持つ。

いつもの手順なのに、指先の温かさだけが残っていた。

隼人くんは入口で待っていた。

私は彼の隣へ行く前に、一度だけ窓際を見る。

空いた椅子。
ガラスに映る、図書室。

あの席にいる彼を、どれほど見ていただろう。

「妃菜、何か忘れた?」

振り返ると、彼がこちらを見ていた。

私は首を横に振る。

「ううん」

隣へ行く。

図書室を出る直前、彼が小さな声で言った。

「あとで、手」

私は顔を上げた。

隼人くんは前を向いていた。

その横顔が照れていて、でも、返事を待っているのがわかった。

私は鞄を持つ手を、反対に替えた。

「……うん」

今度は私から、少しだけ隣へ近づいた。

番外編・終