きみが窓を見なくなるまで

「今日、パン買ったの」

考えた末に言うと、隼人くんが真面目な顔で頷いた。

「うん」

「袋に二個入ってて」

「うん」

「一個、明日の朝にしようと思ってたんだけど」

彼の口元が、少し上がる。

私はその顔を見てから、続きを言った。

「食べちゃった」

隼人くんが下を向いた。

肩がわずかに揺れる。

「……笑うところ?」

「いや」

声に、笑いが混じっていた。

「もう一個の行き先、わかってた」

私は少しだけ眉を寄せた。

でも、彼が顔を上げたときには、私も笑っていた。

こんな話でも、聞いてくれる。

本を一冊読み終えていなくても、話せることはあった。