きみが窓を見なくなるまで

帰る前、私は窓際の席へ寄った。

椅子は、机の下へきちんと戻されている。

ガラスには、室内の明かりが映っていた。

カウンター。
本棚。
並んだ机。

少し離れたところに、隼人くん。

私は窓の中の彼を見た。

彼も、私を見ていた。

胸の奥が、静かに温かくなる。

窓の外にいる誰かを、羨ましいと思っていた。

その人を見て笑う彼が、好きで、苦しかった。

「妃菜」

声がした。

私は振り返る。

隼人くんが、手を差し出していた。

まだ少し照れた顔で。

私はその手へ、自分の手を重ねた。

今度は、迷わずに。

「帰ろ」

彼が言う。

私は頷いた。

「うん」

窓に映った二人が、並んで歩き出した。

私はもう、そちらを見なかった。

隣にいる彼の顔を、見たかったから。

終