きみが窓を見なくなるまで

次の日の朝、教室へ入ると、みなみが顔を上げた。

「妃菜、おはよう」

いつもの声だった。

特別に静かでも、気遣いすぎてもいない。

「おはよう」

私は彼女のところへ向かった。

昨日のことを思い出して、少し恥ずかしくなる。

でも、目をそらさずにいられた。

「今日、パン?」

みなみが頷く。

「うん。昨日の夜、買った」

「何の?」

「たぶん、チーズ」

「たぶん?」

「袋、よく見てなくて」

私は笑った。

教室の後ろで、隼人くんの声がした。

胸が、また小さく鳴る。

恋は、何も終わっていない。

それでも今日は、聞いてほしいことができたら、話せる相手がいる。

私は鞄を机へ掛けた。

みなみが、隣でパンの袋を取り出そうとしていた。