きみが窓を見なくなるまで

隼人くんが読み終えたのは、手紙を出せない人の話だった。

書いては封筒へ入れ、次の日にはまた開ける。

机の引き出しに、宛名のない封筒が増えていく。

「最後、出したんだ」

私が言うと、隼人くんは頷いた。

「うん。でも、返事は書いてなかった」

「返ってきたかどうか?」

「そう」

私は表紙を見た。

机の上に、一通だけ封筒が描かれている。

「返事が来たところまで、読みたかった?」

聞くと、彼は少し考えた。

「いや。出すところまででよかった気もする」

私は顔を上げる。

隼人くんは、閉じた本の角を指で押さえていた。

「返事が怖くて、ずっと出せなかったんだろうから」

私はその指先を見て、ゆっくり頷いた。